心臓
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症例 機能的縦解離を伴ったMobitzI,II型His束内ブロックの1症例
斎藤 浩
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1984 年 16 巻 1 号 p. 91-100

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抄録

症例は79歳女性. 主訴はめまいと眼前暗黒感. 体表心電図では右脚ブロックを伴った第2度房室ブロックを示した. His束心電図で Split H電位(H,H')が記録され, H-H'時間が 40msecから 70msecへと延長し H-H'間でブロックされる 3:2 His束内 Wenckebach現象と, H-H'時間が 40msecで一定のMobitz II型 His束内ブロックが記録された. His束内伝導は, アジマリン, アトロピン, 右房ペーシングにより悪化した. また, QRS波形は, 右脚ブロック型(完全, 不完全), 左脚ブロック型, 正常型と多様に変化したが, His束ペーシングにより正常 QRS波形となり, SV時間は H'V時間と等しかった. 第2度房室ブロックに脚ブロックを伴う場合は, His内伝導障害に基づく心室興奮パターンの変化, すなわち His束内の機能的縦解離現象を考慮する必要があり, 病巣の拡がりや予後を知る上で His束心電図による確認と His束ペーシング施行が大切である.

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