1984 年 16 巻 1 号 p. 85-90
症例は64歳男性, 主訴は呼吸困難. 3年前に呼吸困難のため他院に入院し, 心電図所見より心筋梗塞に伴う心不全と診断された. また, 一過性洞停止のためペースメーカー治療もうけている. 入院2ヵ月前からの呼吸困難の増強のため当科に入院した. 胸部X線上, CTR64%で肺うっ血像を示し, 心電図では, I度房室ブロック, 完全右脚ブロック, 右房負荷所見とともに, I・aVL・V5-6の異常Q波と軽度ST上昇・II・III・aVF・V1-6の陰性T波がみられた. 心エコー検査では,左房・左室の拡大と diffuse hypokinesisを示し, 心筋シンチでは, 不規則で広範な欠損像をみとめた. 左室造影では, diffuse hypokinesisとapical akinesisを示し駆出率は19%であった. 冠動脈造影では, 対角枝に50%狭窄を示す以外著変なく, 拡張型心筋症と診断した. 年齢・心電図所見・心筋シンチ所見などから, 虚血性心疾患との鑑別が困難な1例であった.