心臓
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臨床 Sequential A-Cバイパス術
その有用性と問題点
西田 博遠藤 真弘林 久恵小柳 仁
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1984 年 16 巻 12 号 p. 1254-1260

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抄録

sequential graft(SG)を設置した58例の臨床的検討を行った.病変枝数は約2/3の症例が3枝病変で,ひとりあたり2.64本のバイパスを設置した.手術成績は,手術死亡1例(1.7%),perioperativemyocardial infarction2例(3.4%)で,遠隔成績は,遠隔死亡,狭心症・心筋梗塞の発生のいずれも皆無であった.SG例では,individual graft(IG)例に比し,3本バイパス例で,平均約20分の有意な人工心肺時間の短縮効果が得られた.大動脈遮断時間はSG,IG間に有意差を認めなかった.グラフト流量はS G 例は平均126.0±62.6ml/minとIG例の平均73.7±45.4ml/minに対し有意に高値で,IG例の2倍の約85%の流量であった.また近位部のみの流量は遠位部のみのそれに比し有意に高値を示した.術後約1カ月のSGの開存率は,92.7%と良好でdistal run off 1.5mm 以下の小血管に対しても87.9%の開存率を得た.以上より,SGは,“短時間に多数の良好なバイパスを設置する”と言う,A-Cバイパス術の理想を満たす有力な一手段であるが,SGの設置に際しては,適応の選択,手技の熟練,適切なグラフトの走行(kink, torsion の防止,run off不良側を側々吻合とする),長さの設定および吻合が必要である.また3個以上の末梢吻合をおく,“All in one”graftの乱用は避け,適応も厳密にし,術後急性期には低血圧の防止が重要である.

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