心臓
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症例 異型狭心症,前壁心筋梗塞を伴った右冠動脈左バルサルバ洞起始症の1例
楠目 修浜重 直久土居 義典米沢 嘉啓小澤 利男
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1984 年 16 巻 12 号 p. 1261-1267

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抄録

症例は51歳男性.1年前より労作時前胸部痛があり,1月前より頻度増強し安静時痛も加わり57年10月22日当科に入院した.安静時心電図はほぼ正常だが,早期発作時にはV1~5のST上昇を示し異型狭心症と診断した.軽快後の負荷心電図ではST低下を示した.冠動脈造影では,右冠動脈の左バルサルバ洞起始がみられ,前下行枝近位部の不整像を示したが有意の狭窄は認めなかった.nifedipine nitrateの投与により発作消失し11月29日退院したが,12月6日朝,TNG無効の前胸部激痛のため再入院,心電図・酵素値などより前壁心筋梗塞と診断した.1月半後の冠動脈造影では,前下行枝の完全閉塞を示し,前壁中隔のakinesisを伴っていた.冠動脈起始異常と心筋梗塞・突然死の合併はしばしば報告されその因果関係が注目されているが,右冠動脈の左バルサルバ洞起始での前壁領域の異型狭心症,心筋梗塞の報告はみられず,むしろ冠奇形と冠攣縮に伴う血栓性閉塞の偶発的な合併と推定した.

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