1984 年 16 巻 3 号 p. 259-264
冠動脈疾患における側副血行の役割は, 必ずしも明らかではない. この点を解明する一助として, 冠動脈造影上認められる側副血行を指標とし, 以下の検討をおこなった. 側副血行の有無と程度を, 臨床的な虚血性変化の指標と対比した. 症例は冠動脈疾患120例で, 側副血行を54%に認めた. その頻度は1枝病変例では 24/45, 2枝例では15/37, 3枝例では26/38であった. 狭窄度75%以下の冠動脈では側副血行は認められず, 狭窄度が強くなると頻度が増した. 心内膜下梗塞または心筋梗塞後狭心症の例に, 側副血行の頻度が高かった. トレッドミルによる段階的運動負荷試験では, 心電図虚血性変化の陽性率は, 側副血行のある例では91%, ない例では58%と, ある例で高い陽性率を示し, 側副血行のある例の作業能はない例に比し低下していた. 側副血行供給血管に狭窄のある例では, ない例に比し, さらに作業能が低下する傾向がみられた.