心臓
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症例 心不全と狭心痛を主訴とした腹部大動脈-下大静脈瘻の1治験例
高橋 幸宏田苗 英次平田 昭久野 三郎迫田 八潮楠本 行彦
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1984 年 16 巻 3 号 p. 271-277

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抄録

69歳男性で, 8年前から腹部腫瘤に気づくも, 放置していた. 昭和57年11月より, 胸部圧迫感と息切れが, 安静時に出現し, 入院加療をうけたが, 症状の増悪と共に腹痛が出現し, 本院へ搬送された. 胸部圧迫感と心窩部痛を訴え, 両肺野に湿性ラ音, 腹部に拍動性腫瘤を触知し, CTにて腹部大動脈瘤を確認した. 心不全, 狭心痛に対し, 内科的治療を行い改善を認めたが, 再び, 狭心痛が頻回となり, 同時に腹部腫瘤部の疼痛, スリルと連続性雑音を聴取するようになった. カテーテル検査にて, 腹部大動脈 - 下大静脈瘻, 冠動脈病変が判明した. 投薬増量にて, 症状は改善したが, 腎機能低下が進行するため, 緊急に手術を行い, 瘻孔閉鎖と大動脈瘤の人工血管置換術を施行した.心不全と狭心痛は,術直後より軽快し, 腎機能低下も改善したが, 術後肺不全の治療に, 1週間を要した. 以後は, 2枝の冠動脈病変にもかかわらず, 狭心痛もなく, 良好な経過である.

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