1984 年 16 巻 3 号 p. 298-302
下肢静脈瘤起源の thromboemboliによる反復性肺塞栓症で約5年間に高度の肺高血圧症が進行したにもかかわらず, ほとんど自覚症なく経過した49歳男性例を報告した. 本例はいわゆるpulmonary micro-thromboembolismではなく, 肺血流スキャンにより容易に肺塞栓症と診断される型であったが, 肺動脈収縮期圧 110mmHg, 右室拡張末期圧 14mmHg, 心係数2.4 l/min・m2で著明な三尖弁閉鎖不全を示していたにもかかわらず, 日常の会社での管理職業務を遂行していた. 肺塞栓, 右心不全で比較的自覚症にとぼしい例があり, 発見すれば抗凝血薬療法および下大静脈閉塞で病状の進行を停止させられることを示した.