抄録
症例は40歳の女性.高校1年生の頃,初めて心雑音を指摘され心臓弁膜症といわれたが症状なく放置していた.昭和57年1月下旬より夜間高熱が持続するようになり,近医にて腎盂腎炎として治療を受けていた.症状不変のため精査目的に当科を受診.活動性感染性心内膜炎の診断で入院した.心臓超音波検査により大動脈弁輪部膿瘍と大動脈弁疣贅を合併した感染性心内膜炎と診断された.その後本症例は膿瘍腔の拡大とともに,房室ブロック,上室性および心室性期外収縮,心のう液貯留を伴う心外膜炎,および急性大動脈弁閉鎖不全が出現し進行性の心不全へと増悪の臨床経過をたどったが,緊急手術を施行して救命し得た.術前に大動脈弁輪部膿瘍を診断した例は少なく,また起因菌としてActinobacillus actinomycetemcomitansが同定され,これを起因菌とする感染性心内膜炎はまれである.