抄録
著者らは,房室ブロックを伴う修正大血管転換症の2成人例を経験し,そのブロック部位を確認し得たので,本症における諸検査の意義と,合併房室ブロックに関する文献的考察とをあわせて報告する.症例1は,55歳の男,症例2は,50歳の女で,それぞれ,失神発作と息切れとを主訴とした.心エコー図では,2例とも大動脈の前方偏位と,動脈側房室弁の三尖構造を示唆する所見とを認めた.RIアンギオでは,2例とも大動脈と肺動脈の走行異常を認めた.心血管造影検査では,2例とも大血管・心室・冠動脈の転位を認め,症例2では,動脈側房室弁に逆流をみた.房室ブロックに対し,電気生理学的検査を行い,症例1では,第3度AHブロックを,症例2では,第2度から第3度のAHブロックを認めた.2例ともに,Adams-Stokes発作予防に,心筋電極ペースメーカーを植込み,さらに症例2では,動脈側房室弁の弁置換術も施行した.