抄録
CCM様病像を呈して入院した症例の家系にHCMの症例が存在し,両者の関連に興味が持たれた.CCM様症例の剖検にて心室中隔,左室前壁の著明な肥厚と同部位における心筋の錯綜配列,および左室後壁の菲薄化と心筋変性脱落所見が確認され,本例はHCM(家族性)に何らかの誘因が作用し,主として後壁が侵され,CCM類似の状態に陥ったものと解釈した.その因子として,ウイルス性心筋炎あるいは血管障害による虚血を考えたが,心筋組織所見からその可能性は低く,むしろ元来肥大がび慢性に存在し異常心筋が広範に存在するwidepread disease であるHCMの末期像である可能性が強く示唆された.本症例は,HCMからCCM類似の病態への移行例あるいは,同一家系内におけるHCM,CCMの混在例の示す意義およびその可能性に対し何らかの示唆を与える重要な症例であると思われ報告した.