抄録
SLEでは種々の心血管障害を伴うが,心筋梗塞の合併は従来極めてまれとされてきた.本邦の報告例はいまだ数例にすぎないが今後のSLE早期発見および治療法の進歩に伴い長期生存例が増加するにつれて重要な問題と思われる.そこでSLEに伴った急性心筋梗塞の1例を報告するとともに,その成因などにつき文献的考察を加えた.症例は48歳女性.昭和50年よりSLEの診断にてステロイド療法をうけていた.昭和56年6月より労作性狭心症が出現し亜硝酸剤で改善していた.昭和56年9月急性下壁梗塞,10月前壁中隔再梗塞出現,12月当科に精査のため入院となった.冠動脈造影では,左前下行枝Seg.6 100%,左回旋枝Seg.12 90%,右冠動脈Seg.2 100%と三枝とも著明な変化をみとめたが,冠動脈瘤などは認めなかった.検査所見から,SLEは,現在非活動性と考えられ,冠動脈硬化症によるものと考えた.