心臓
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症例 左冠動脈左房瘻に心室中隔欠損,心房中隔欠損を合併した乳児の1治験例
小林 順二郎大西 健二春日井 務岡村 弘光小林 芳夫塚口 功青木 智寿
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1986 年 18 巻 12 号 p. 1374-1378

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抄録

症例は9カ月のDown症候群の女児.繰り返す気道感染と体重増加不良のため当科を受診Levine 2/6度の収縮期雑音を聴取した.胸部X線像上心胸郭比56%,心電図上右室肥大を認めた.超音波検査,心臓カテーテル検査および心血管造影にて心室中隔欠損(VSD),心房中隔欠損(ASD)を伴う左冠動脈左房瘻と診断した.肺動脈圧は体動脈と等圧で,肺体血流量比が1.3であったため根治手術を施行した.体外循環下にVSD,ASDを閉鎖,冠動脈瘻は左房開口部,瘻および左冠動脈より瘻起始部の3カ所で結紮した.術後検査にて肺動脈圧は低下し,冠動脈瘻は消失しており術後31日目に元気に退院した.
冠動脈瘻は先天性心奇形のうち比較的まれな疾患である.瘻の流入部位としては右心系が約90%を占め,左房は欧米においては約5%であり,本邦においては1例の報告を見るのみである.本例のごとく乳児期に根治手術を要する心奇形を合併する左冠動脈左房瘻は本邦における第1例と考えられる.

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