心臓
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症例 Incessant tachycardiaを示したconcealedWPW症候群の1例
DDD pacemaker(AV間隔65msec)と経口verapamilの併用効果
横山 正一新宮 哲司坂田 和之岩瀬 知行吉田 裕森 典子高山 真一星野 恒雄鏑木 恒男
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1986 年 18 巻 12 号 p. 1379-1386

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抄録

Concealed WPW症候群によりincessant tachycardiaを呈す症例にAV間隔を65msecに短縮したDDD pacemakerを植え込み,経口のverapamilを併用して頻拍を抑制した.DDD pacemakerによるcircus movement tachycardia のcontrolはこれまで報告がなく新しい治療法になりうると考え報告した.症例は51歳男性.覚醒中はほとんどずっと150/分の頻拍,夜間の睡眠時のみ60/分前後だった.洞調律時の血圧は130/70mmHg,頻拍時は90/50mmHgで労作時の息切れとふらつきが強かった.頻拍時の心電図でQRSは正常,PはII,III,aVFで下向きRP'/RRは0.35である.頻拍はいったん停止しても数拍のうちに期外収縮によらずに洞調律にひき続いて再び頻拍となり,これをくり返した.電気生理学的検査で右房後壁中隔よりに逆伝導のみ可能の副伝導路を有するconcealed WPW症候群と診断した.頻拍の停止にはdiltiazemの静注が有効だったが経口の抗不整脈薬はほとんど予防効果を示さず,また患者は手術によるbypass切断を希望しないためpacingによる頻拍の抑制を試みた.心房のsingle,coupledあるいはburst刺激では時に心房粗動,細動を誘発し,またいったん停止させ得ても数拍の洞調律のうちに次の頻拍に移行した.このため発作の停止よりも予防を目的としてAV間隔を65msecに短縮したDDD pacemakerを入れ心室の早期興奮を図り,これに経口のverapamilを併用してほぼ完全に頻拍を抑制した.

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