心臓
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症例 I型総動脈幹症(生後34日)に対する根治手術の1例
大橋 秀隆大保 英文大嶋 義博細川 裕平橘 秀夫鄭 輝男三戸 寿山口 眞弘
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1986 年 18 巻 12 号 p. 1407-1412

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抄録

総動脈幹症は比較的まれな疾患であるが,予後不良で早期の外科的処置を要する.われわれは生後34日,3,280gの本症男児に一期的根治手術を施行し良好な結果を得た.患児は生後3日目に哺乳不良,心雑音,チアノーゼのため当院に入院した.多呼吸,心拡大がみられ,強力な内科的治療が行われたが,呼吸困難が進行し,生後33日目に心臓カテーテル心血管造影検査を行い,総動脈幹症I型と診断された.翌日,超低体温低流量体外循環下に12mm Hancock valved conduitを用い根治手術を施行した.手術時,胸腺欠損が認められた.胸骨の一期的閉鎖は困難であったため,胸骨は開放として心膜および皮膚を補填拡大し創を覆い手術を終え,術後27日目に胸骨を閉鎖した.術後長期にわたりトラゾリン投与を必要とし,また術後5カ月時の心精査にて心内修復は良好であったがPp/Ps0.55と肺高血圧の残存がみられた.このことから本症例では生後34日ですでに肺血管の閉塞性病変が進行していたのではないかと思われた.本症例の経験から,心不全,呼吸不全の内科的コントロールが困難な症例では,新生児,乳児期早期の一期的根治手術を考慮する必要があると考えられた.

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