心臓
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症例 三尖弁閉鎖症機能的根治手術後の遠隔期に蛋白漏出性胃腸症を合併した1症例
難波 宏文谷口 堯仲原 純一松本 三明山岸 正明枝廣 徹榊原 宏榊原 亨竹内 肇
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1987 年 19 巻 12 号 p. 1441-1446

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抄録
三尖弁閉鎖症(Edwards-Burchellの分類TypeIlb)の7歳男児に対してmodifiedFontan手術を行い,術後遠隔期に蛋白漏出性胃腸症を呈した症例を経験した.手術は右心耳肺動脈直接吻合が行われ,手術後の経過は良好であった.術後7カ月より進行性の全身浮腫と低蛋白血症・低albumin血症を呈し始め,術後2年5カ月の時点では腹痛・下痢・嘔吐等の消化器症状を呈した.手術後早期と蛋白漏出性胃腸症合併時での心臓カテーテル検査所見では,軽度の右心房圧の上昇は認められるが,右房肺動脈吻合部での圧較差は認められず,この2つの時期での変化は認められなかった.また臨床症状に比して,右心不全の症状および所見はなかった.治療面では強心利尿剤は全く効果がなく,albumin・FFP等の蛋白製剤が著効を示した,現在中鎖脂肪酸(MCT)による治療を始めている.心疾患に関連して起こってくる蛋白漏出性胃腸症の発生機序に関しては,諸家の報告があるが,現在でもなお確定した説はない.しかし本症例でも,中心静脈系の圧上昇だけでなくて,潜在的に腸管ないしその上部のリンパ管の先天性形成不全・部分的あるいは不完全閉塞が存在したのではないかと考えられた.
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