1987 年 19 巻 5 号 p. 559-568
Mモード心エコー図で明らかなasymmetric septal hypertrophy(ASH)が見られない症例を,左室造影第1斜位像でスペード型の左室変形を示すapical hypertrophy 29例と心尖側中隔に肥厚を認めるapicalasymmetricseptalhypertrophy(apicalASH)26例に分類し,その臨床像を比較検討した.Apical hypertrophy群は中高齢男性に好発したが,apical ASH群は明らかな好発年齢,性差は認めなかった.巨大陰性T波はapicalhypertrophyの93%に認めたがapica1ASHではまれであった.血行動態的には,apical ASH群は左室拡張末期圧の上昇,左室内径短縮率の低下,運動耐容能の低下など,著明な左室機能の低下を認めたが,apical hypertrophy群では高齢にもかかわらず強い左心機能の低下は認めなかった.家族歴の検討ではapical ASH群は高頻度に家族性を示し,第1度近親者の8例にapicalASHを,他の7例に典型的ASH(うち3例は閉塞性例)を認めたが,apical hypertrophy群では家族性は比較的まれであった.
以上よりapical ASHはASHを伴う肥大型心筋症のdisease spectrumに含まれるものと考えられた.一方,apical hypertrophyは古典的なHCMとは異なる疾患と考えられ両者は明確に区別して扱われるべきものと考えられた.