心臓
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症例 心筋病変を合併した進行性筋ジストロフィー症保因者の2例
小池 清一川 茂幸下鳥 正博遠藤 良平原 卓史相楽 達男佐々木 康之古田 精市本間 達二吉岡 二郎
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1987 年 19 巻 5 号 p. 610-615

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抄録

Duchenne型進行性筋ジストロフィー(DMD)は種々の程度に心病変を合併し,臨床的には心筋の線維化に伴う心不全を呈することが知られている.DMD保因者もまた類似の心病変を合併し,心電図所見について従来より報告がなされている.しかし心病変について詳細な検討を行った症例は極めて少なく,病態に関して多くは不明である.著者らは心筋病変を合併したDMD保因者の2例について観血的検査を施行した.心電図は症例1で完全右脚ブロックを示し,症例2ではV1のR/S比が1以上を呈した.心機能は左室駆出率で両者とも50%程度と低下していた.心筋生検所見は症例1で心筋細胞の肥大,錯綜配列像を呈し,症例2では脂肪変性,間質の線維化などを特徴とした.しかし本2例ではDMDに特徴とされる左室後側壁の病変は,画像診断上認めなかった.文献的には心病変を有する例は比較的少なく,さらに臨床症状を呈する症例は極めてまれと考えられた.しかし本例のごとく潜在的な心機能低下を示す症例も少なからず存在すると推測され,拡張型心筋症との鑑別上注意を要すると思われた.

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