抄録
巨大陰性T波(GNT)と心尖部肥大型心筋症(AH)との関係,さらにこれにspade型変形を加えた3者の相互関係は現在のところ明確にされているとはいえない.それはAHの心尖部レベルの形態が十分に解明されていないためと考えられる.磁気共鳴映像法(MRI)は心尖部レベルの左室短軸像を正確に描出しうる.そこで本研究では本断面像を用いてこれら3者の関係を明らかにし,さらにGNTないし陰性T波の程度およびその記録誘導部位とAHの心尖肥大の程度およびその分布様式との関連を解明しようとした.
GNTを有するかあるいはAHの診断を有する27例を対象とし,心尖部ンベルと心基部レベルのMRI左室短軸拡張末期像を得た.27例中24例がAHであった.AH例の内spade型を呈するのは10例であり,14例はspade型を呈さない限局肥大型であった.AH24例中GNTを有するのは14例であった.AHの心尖部レベルの肥大の分布とGNTないし陰性T波の肢誘導および胸部誘導における記録部位とには統計学的関連性はなかった.AHの心尖部肥大の程度にはGNTの有無で差はなかった.GNT,AH,spade型の相互関係の解明に心尖部レベルMRI左室短軸像は有用であった.GNT例の多くは心尖部レベルのいずれかに肥大を有しており,すべてのAHはspade型変形にて診断されるとは限らないため,左室短軸像にて心尖部レベルの全周性評価を行うことが診断上必須と考えられた.