抄録
肥大型心筋症(HCM)の再分極異常の成因を解明するために.運動負荷前後のQRST isointegralmapにて検討した.対象は,正常コントロール10例とHCM35例(閉塞型(HOCM)10例,非閉塞型(HNCM)15例,心尖部型10例)であった.安静時QRST isointegral mapは,正常コントロール例では左前胸部に極大を,右胸部上方に極小をもつ分布を示したが,HCMでは22/35例(63%)にて左前胸部に極小をもつ異常分布を示した.特に巨大陰性T波を有する14例は,すべて異常分布であった.安静時QRST isointegral map異常例に対して,運動負荷後の分布の変化を検討すると,APH9例中8例では負荷後正常分布になる傾向があった.しかし,HNCM9例中8例,HOCM4例中4例では負荷後も,安静時と同様の異常分布を示した.以上より,HCMにおける再分極異常は主として一次性変化によると考えられたが,運動負荷による反応がHCMの病型により異なったことから,HCMの病型により,肥厚形態の差のみならず,カテコールアミン等に対する反応の差があるものと思われた.