抄録
寒冷負荷試験の冠動脈疾患の診断における臨床的意義を明らかにする目的で,胸痛を主訴とする34例を対象として,経静脈性digitalsubtractionangio・graphy(DSA)による左室造影を施行し,寒冷負荷による左室駆出分画(EF)および左室局所壁運動の変化を定量的に検討した.また,34例中32例ではエルゴメータによる運動負荷試験をも施行し,心プールシンチグラフィーにより運動負荷による左心機能の変化についても検討した.上記検査後,冠動脈造影を施行し,対象を冠動脈造影上の有意狭窄の有無により,冠動脈疾患(CAD)17例と有意狭窄を認めない正常冠動脈群(NC)17例とに分類した.
結果:寒冷負荷により左室EFは,CAD群では有意に低下し,NC群では不変であった.運動負荷においては,両群とも有意の変化を認めなかった.個々の症例での変化をみると,いずれの負荷でも両群間の重なりが大であった.寒冷負荷による局所壁運動異常は,CAD群では17例中15例(88%)で出現したがNC群でも17例中8例(47%)で出現した.一方,運動負荷による局所壁運動異常を,CAD群では16例中14例(88%)に認め,NC群では16例中3例(19%)にのみ認めた.
結論:寒冷負荷DSA法による冠動脈疾患の診断における感度は良好であった.一方,その特異性は必ずしも高くなかったが,これは対象に胸痛症候群を含んでいるためと考えられ,寒冷負荷はこの点で運動負荷とは異なる意義を有することが示唆された.