抄録
ドック会員において,その経過中に変化した心電図所見の中で最も頻度の多い所見は陰性T波の出現であった.この陰性T波は様々な原因で生じるが,その発生機序は十分解明されていない.またその臨床的意義についても不明な点が多い.そこで我々は陰1生T波出現症例についてその出現誘導部位ならびにその深さと心臓超音波検査所見における肥大の程度ならびに左心機能との関係について検討した.
結果,ドック会員3,687例において,平均5.1年の経過観察期間内に陰性T波の出現を71例(1.93%)に認めた.超音波検査所見では71例中正常26例(36,6%),非対称性中隔肥厚(ASH)32例(45.1%),対称性肥大(LVH)9例(12.7%),心尖部肥大(AH)4例(5.6%)であった.心電図と超音波検査所見との関係では陰性T波の出現誘導部位が多くその電位が0.5mV以上の症例に肥大の所見を高率に認めた.高血圧症の合併あるいは心電図上の左室肥大を伴っている例では肥大を認める例が多く,左心機能低下例5例は全例に両者の合併を認めた.以上よりドック会員において心電図上陰性T波の出現をみた場合その誘導部位と深さについて,経時的変化をみていくとともに超音波検査により肥大の程度についてチェックしていく必要がある.
さらに高血圧症あるいは心電図上の左室肥大を伴っている症例では特に注意深い経過観察が必要である.