抄録
症例は動悸発作を有する75歳男性.心臓電気生理学的検査にて,発作性“上室”性頻拍が誘発されたが,頻拍中にR-R間隔が漸増した.この時,ヒス束心電図上,心房波に先行していたヒス束波(および心室波)が徐々に遅れて出現し,ついにはブロック(A-H Wenckebach型)に至った.この所見より,ケント束をリエントリー回路に含む房室リエントリー性頻拍は除外された.心房興奮が下位より上位で,心房波が心室波に一部重畳すること,また,verapamilが頻拍停止に有効であったこと等より,本頻拍の機序として房室結節リエントリー性頻拍が考えられた.心房一ヒス束聞のブロックにもかかわらず頻拍が持続することより,リエントリー回路下部に下部共通路の存在を想定した.一方,頻拍中に加えた心房早期刺激が頻拍周期に影響を及ぼさないこと,心房周期に強いalternansがみられたことより,上部共通路の存在の可能性が示唆された.以上のように,本例ではリエントリー回路が房室結節内に限局し,その上部・下部に共通路が存在すると考えられる電気生理学的所見が得られた.