抄録
難治性心不全の主因が前腕に作成された内シャントの拡大によることを面行動態の面から解明しえた慢1生透析患者の,1例を経験し,シャント閉鎖により心不全の消失をみたので,報告する.
患者は47歳,男性.主訴は労作時呼吸困難,7年前に内シャント作成術を受けている.身体所見では瘤状に拡大した内シャント,頸静脈怒張,心拡大を呈し,検査所見では左室のび漫性壁運動低下,高度の僧帽弁逆流を認めた.心エコー図,超音波ドプラ法によりシャントの圧迫閉鎖前後で著明な心拍出量の変化が観察され,右心カテーテル検査により確認された.内シャントの永久閉鎖により,心不全症状はすみやかに消失し,心拡大は2カ月後,僧帽弁逆流も5カ月後には消失し,左室壁運動の改善を認めた.
本例ではシャント閉鎖により高拍出性心不全が治癒したことから,長期間の変化としてシャントの拡大により,流量が増大し,心不全をきたしたと考えられた.内シャントの心機能に対する影響は一般に軽微とされるが,心不全を有する患者や,シャントの増大が認められる患者については内シャントの影響を注意深く再評価すべきであると考えられた.