心臓
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症例 急性心筋梗塞を合併し心室中隔穿孔にて死亡した心サルコイドーシスの1剖検例
風呂谷 匡彦栗林 恒一斎藤 晃治元木 賢三楠山 洋司
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1990 年 22 巻 4 号 p. 408-411

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抄録
心サルコイドーシスは,伝導障害,不整脈,心不全などの種々の臨床症状を呈し,サルコイドーシス症の重要な死因となっている.今回我々は73歳女性で急性心筋梗塞・心室中隔穿孔を引き起こして死亡し,剖検にて心サルコイドーシスと診断した1例を経験した.患者は前胸部絞擁感を訴えて近医を受診し,心筋梗塞と診断され,国立田辺病院に入院したが救命しえず発症後約30時間の経過で死亡した.剖検による病理組織にて,冠状動脈前下降枝は高度の粥状硬化を呈しており,その内膜面にびらんを認め,それに伴い新鮮な血栓が形成されほぼ完全な閉塞状態となり,同支配領域の心室前壁・下壁に新鮮な梗塞像および前壁・中隔移行部に穿孔を認めた.さらに,心尖部,心室中隔中部および心房中隔の心筋内に孤立散在性に多核巨細胞,リンパ球浸潤を伴った非乾酪性類上皮性肉芽腫も認められた.同様の肉芽腫は肺胞壁,肺門部リンパ節,肝臓,脾臓内にも認められたため,病理解剖により初めて心病変を伴ったサルコイドーシスと診断された.心サルコイドーシスの死因として,心不全や突然死,不整脈などが考えられているが,本例のごとく急性心筋梗塞を合併し,心室中隔穿孔にて死亡した心サルコイドーシスはまれであり報告した.
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