抄録
糖原病による心筋疾患の1例を経験した.症例は19歳の女性で,心不全症状を主訴として当科を受診した。心エコー図,左室造影では左室の著明な拡大,左室壁運動の全体的な低下を認め,左室壁厚の増大はなかった.心内膜心筋生検で心筋内にグリコーゲンの蓄積を認めたが,骨格筋および肝の生検では異常所見を認めなかった.本症例は利尿薬の投与で心不全症状の改善を示したが,心不全症状出現後1年6カ月して自宅で突然死した.本例では,グリコーゲン蓄積が心筋のみに限局していることから,従来の糖原病の病型に属さない型の糖原病と考えられ,心筋特異的なグリコーゲン代謝酵素の欠損が推察された.