心臓
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研究 冠閉塞時の側副血行循環の役割
経皮的冠動脈形成術施行時の検討
岩永 史郎半田 俊之介阿部 純久和井内 由充子楠原 正俊佐藤 吉弘大西 祥平中村 芳郎
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1990 年 22 巻 5 号 p. 483-490

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抄録

側副血行循環が心筋虚血の防止に果たす役割は十分には解明されていない.経皮的冠動脈形成術(PTCA)中の人為的な冠閉塞時の側副血行循環の役割を検討した.PTCA中に狭窄末檜圧を計測できた29症例33病変を対象とした.冠動脈造影で側副血行循環の程度を0~3度の4段階に評価した.PTCA中に冠動脈狭窄末槍圧,冠動脈閉塞末梢圧(CWP),標準12誘導心電図,冠動脈内心電図(ic-ECG)を経時的に記録した.IcECGは対象とした33病変中26病変で記録できた.1.冠閉塞中に心電図変化を認めた20例を虚血群とし,心電図変化を生じなかった12例を非虚血群とした.虚血群20例中18例では冠閉塞中に胸痛を認めたが,2例では胸痛を生じなかった.非虚血群では全例に側副血行を認めたが,虚血群では3例(15%)のみに認めた.非虚血群のCWPは29±2rnmHgであり,虚血群15±1mmHgに比べ高値であった.2.側副血行循環を認めない0度の症例のCWPは15±1mmHgであった.側副血行循環が1,2,3度の症例は各々24±5,28±3,23±3mmHgであり,0度の症例よりも高値であったが,3群間には差を認めなかった.高度の側副血行循環が認められた症例は,狭窄が高度であり,PTCA前の狭窄末檎圧も低値であった.
側副血行循環が認められた狭窄病変でのCWPは20mmHg以上あり,一過性の冠閉塞時に胸痛や心電変化を生じなかった.造影による側副血行循環の評価は,側副血行循環の程度よりも狭窄病変の重症度を反映していた.

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