1990 年 22 巻 5 号 p. 609-611
NaCa交換機転は細胞膜を介するNaイオンの濃度勾配を使い,細胞内から外へ濃度勾配に逆らってCaイオンを運び出す機転で,一種の交換輸送の機構である.ATPの化学エネルギーは使われないので,各イオンについての電気化学エネルギーから平衡電位を考えることができる.NaとCaの交換比率について,イオンフラックスの測定,細胞内のイオン濃度の測定,膜電位とフラックスの関係等が調べられ,その交換比率は3Na:1Caとする考え方が最も有力である。視細胞では最近4Na:1Ca,1Kの交換比率が示唆されている.いずれにしても,その交換は起電性であり,交換される電荷の差が膜電流として記録できている.Na-Ca交換は直接的に,また細胞内のCa濃度変化を介して間接的に,心筋の興奮性に影響する。