心臓
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研究会 第22回 理論心電図研究会 第2テーマ:細胞内CaとNa-Ca交換機構 Caによるウサギ洞結節遅延K電流(Ik)の調節
羽渕 義純古川 泰司西村 昌雄渡部 良夫
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1990 年 22 巻 5 号 p. 602-608

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抄録

ウサギ洞結節の遅延K電流(Ik)の動態に及ぼすCaの影響を微小標本における二重微小電極法を用いて検討した.灌流液中のCaをCoまたはMnで置換すると,Ikの遅い成分(Ik,sliw)は著しく減少し,その時定数は電位依存性に短縮,活性化領域は約10mV過分極側へ変位した.それに対し,Ikの速い成分(Ik,fast)はCa置換によりほとんど変化せず,そのカイネティックスも影響されなかった.Ca存在下ではIkの脱活性化の遅延と活性化の促進が観察されたが,差し引き法によりCa依存性Ik成分を求めると,以上の変化は,Ik,slow成分がCa置換前後で変化することにより生ずるものと考えられた.Ca非存在下でのIkを3-statemodelもしくは二次以上のH-Hカイネティックスによるmode1でsimula・tionを試みたが,洞結節Ikの速い活性化は再現し得なかった.Ik,fastとIk,sliwを独立した電流とすると,それぞれの最大活性化電流は内向き整流を持つことが判り,その活性化のsimulationも可能であった.以上より洞結節のIkには2種類のIkが存在し,両者はその時定数に加えCaに対する感受性によっても異なること,さらにそのうちのIk,sliwはCa存在下で活動電位再分極や膜電位の維持に貢献することが示唆された.

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