心臓
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臨床 拡張型心筋症の病像を呈した慢性心筋炎の4剖検例
平光 伸也森本 紳一郎山田 健二植村 晃久水野 康久保 奈津子田中 道雄西川 俊郎笠島 武荷見 源成
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1991 年 23 巻 1 号 p. 20-27

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抄録
生前,拡張型心筋症の病像を呈し,剖検にて慢性心筋炎であることが明らかになった4症例を経験したので報告する.年齢は7~42歳の男女各2例で,心症状に先立ち,2例に感冒様症状,2例に発熱がみられた.罹病期間は7カ月~10年11カ月(平均3年8カ月)で,心重量は7歳の小児を除き,610~940g(平均720g)であった.心室の一横断面を用いた組織学的検討では,集籏した小円形細胞の浸潤が,各症例で10~187カ所に認められ,同部位には心筋細胞の脱落に伴う著しい膠原線維の増生が認められた.その線維化面積率の平均値は心室中隔で26.3%,左室自由壁で31.2%,右室自由壁で21.6%であった.拡張型心筋症では,一般に本症例のごとく著しい小円形細胞の浸潤を認めることはなく,心筋炎の存在について異論はないと考えられた.一方特発性の急性心筋炎では,このような著しい心重量の増加や広範な線維化を認めることはなく,したがって本症例は,慢性心筋炎と位置づけるのが妥当と思われた.現在拡張型心筋症と診断されている症例の一部に,本症例のごとき慢性心筋炎が混入していることが示唆された.
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