1991 年 23 巻 11 号 p. 1291-1297
ホルター心電図記録中に広範肺塞栓が発症し,心調律と心電図変化の経過がおえた症例を経験した.本症の心電図所見は多彩で,従来,洞頻脈,V1-3のT波陰転SIQ III T IIIパタンが重要視されているが,発症早期には突然の徐脈が生じ速やかに洞頻脈化すること,STがV5で下降,V1で上昇しうることが示された.これは,急激な右室拡張・内圧上昇の結果,vasovagal refiexを介し徐脈と体血圧下降を生じ,低酸素血症とあいまって左室の心内膜下虚血(V5のST下降)と右室の全層性虚血(V1のST上昇)が発生した可能性が考えられた.急死の一因ともなる本症発症時の心電図所見が得られたことは貴重と考え報告した.