1991 年 23 巻 11 号 p. 1298-1302
厳格な内科的療法によっても再発を繰り返した肺高血圧症を有する肺動脈血栓症例に対し,体外循環を用いて右肺動脈上中下葉分枝にまたがる血栓除去術を施行し,術後経過良好な症例を報告する.症例は58歳女性で,呼吸困難,右側胸部痛を主訴とし,機能分類ではNYHA第IV度であった.術前の肺血流シンチグラフィーで右肺上中葉に大きな欠損像および肺動脈造影では右肺動脈本幹に血栓陰影を認め,右肺動脈血栓症と診断された.第1回の肺血栓より抗凝固療法が約半年間施行されたが,第2回の再発が出現し前記症状は増悪したため,手術適応となった.心臓カテーテル検査では肺動脈圧は78/22(43)mmHgと著明な上昇を示し,心係数は2.35 l/min/m2と低値であった.術後2カ月目には,右肺血流が改善され右心圧負荷は軽減(肺動脈圧54/22(33)mmHg)された.また心係数も3.43 l/min/m2と増加し,機i能的にはNYHA第1度までに回復しえた.術後1年経過した1990年6月現在,warfarin投与を行っており術後の再発もなく,患者は正常生活を送っている.