心臓
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症例 血性心嚢液による心タンポナーデをきたしたSLEの1例
平井 淳一伊部 直之青山 隆彦若杉 隆伸嵯峨 孝明石 宜博山崎 義亀與斉藤 和哉浜田 真本定 晃
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1991 年 23 巻 11 号 p. 1303-1309

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抄録
40歳,女性.1989年6月上旬より38-39℃ の発熱,動悸,全身倦怠感を,7月下旬より呼吸困難,起坐呼吸を認め,8月18日症状増悪し入院.心拍数154/分,心胸郭比77%,断層心エコー図で多量の心嚢液貯留を認め,血圧は80/62mmHgに低下し,奇脈(吸気時に収縮期血圧が14mmHg低下)を呈しており心タンポナーデと診断された.緊急心膜穿刺にて血性心嚢液(細胞診class II,細菌なし)を約800ml排液後,心拍数125/分,心胸郭比68%に軽減し心嚢液貯留は消失していた.そして血圧は130/80mmHgに安定し症状も改善した.検査成績:WBC3,000/Mm3,Hb9.5g/dl,Plt6.3×104/mm3,ChE428IU/l,ICG60.72%,TP9.1g/dl,A/G0.46,HPT32%,TT30%,fT3 4.2pg/ml,fT4 2.35ng/dl,C3 45mg/dl,C4 14mg/dl,CH50 28.6単位,LEtest(+),抗核抗体1,280倍D,抗DNA抗体180 U/ml.甲状腺エコー;"慢性甲状腺炎"の像.肝生検;自己免疫性の慢性活動性肝炎.以上の所見よりSLE(自己免疫性の慢性活動性肝炎,慢性甲状腺炎の合併)と診断し,プレドニゾロン30mgとチアマゾール30mgの治療にて臨床症状,検査成績ともに改善した.血性心嚢液による心タンポナーデをきたしたSLE症例は,諸外国で8例,本邦で5例の報告しかなくまれと考えられた.
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