心臓
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症例 労作性狭心症で発症した心アミロイドーシスの1例
木庭 新治矢沢 卓井上 紳嶽山 陽一片桐 敬
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1991 年 23 巻 4 号 p. 404-410

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抄録
圧迫感が出現し,同63年8月にはより軽労作で頻回に胸痛が出現したため,当科に入院した.入院時身体所見には異常なく,胸部X線で心拡大なども認めなかった.安静時心電図で,左軸偏位を伴う低電位差傾向とV、,2でのQS型を呈したが,ST-Tに異常は認めなかった.Treadmill運動負荷試験で胸痛を伴う胸部誘導の虚血性ST低下を認めた.運動負荷タリウム心筋シンチグラムでは,前壁の壁不整を呈したのみで,明らかな欠損像や再分布像はみられなかった.心臓カテーテル検査では,左室造影上壁運動異常はみられず,駆出率は76%と良好であったが,ペーシング負荷では胸痛が誘発され,運動負荷と同様なST低下が見られた.冠動脈造影ではスパズムの関与もなく,ペーシング中も正常像を示した.心筋生検では,両心室の心筋の変性・脱落による心筋細胞の減少と心筋筋層内小動脈壁に内腔の狭小化を伴う著明なアミロイド沈着が認められ,心アミロイドーシスと診断した.直腸生検でも同様に血管周囲へのアミロイド沈着を認め,原発性アミロイドーシスと診断した.またアミロイド蛋白は過マンガン酸カリウムで処理されずAL蛋白の可能性が高く,本症を強く示唆した.本例は冠動脈造影上正常所見を呈し,労作性狭心症の原因として心アミロイドーシスによる冠微小血管の内腔狭小化の関与が考えられ,さらに心アミロイドーシスの発症に関して詳細に心電図経過を観察しえたまれな1生存例と考えられるので報告する.
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