心臓
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症例 パルス・ドプラー法にて経過を追えた急性肺血栓塞栓症の1例
山佐 稔彦今村 俊之松永 和雄原田 敬原 耕平西島 教治宿輪 昌宏
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1992 年 24 巻 11 号 p. 1320-1325

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抄録
症例は53歳,女性.意識障害,痙攣,ショックで発症し,原因精査および治療の目的で当院へ入院となった.心電図は,急性の右室負荷所見を呈し,心エコーにて右室の著明な拡大,中隔の左心室への圧排,カラードプラーエコーで三尖弁逆流が認められた.パルスドプラー法による右心室流出路血流速波形は,著明な肺高血圧パターンを示し,流速波形面積も小さく1 回拍出量の減少も示唆された. スワンガンツカテーテルを肺動脈へ挿入を試みたが,肺動脈より右心室ヘカテーテルが押し戻され挿入は困難であった.急性肺血栓塞栓症と診断し,ウロキナーゼ96万単位を経静脈的に投与した.心エコー上の右室拡大や中隔変形は,徐々に正常化し,右心室流出路血流速波形も急性期の肺高血圧パターンから正常のパターンへ改善し,流速波形面積も拡大したことより,一回拍出量も徐々に増加したことを示していた.
慢性期に施行した肺換気・血流シンチグラフィー,右心カテーテル検査はともに正常化していた.血栓シンチグラフィーで両下肢に集積を認め,下肢静脈造影で多数の静脈血栓および静脈閉塞を認め,この部位が血栓産生部位と考えられた.
急性肺血栓塞栓症は,発症早期に致死的となることも多いが,早期の適切な治療で救命できる疾患でもある.本症の診断や経過のfollow upに,パルスドプラーエコーが有用であった症例を経験したので報告した.
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