心臓
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症例 心室中隔欠損のパッチ閉鎖術後に合併した致死的機械的溶血性貧血の1例
鈴木 浩秋場 伴晴芳川 正流大滝 晋介小林 代喜夫中里 満橋本 基也佐藤 哲松嵜 葉子佐藤 哲雄中井 伸一折田 博之中村 千春鷲尾 正彦
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1992 年 24 巻 5 号 p. 551-556

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抄録

症例は生後1日目に,大動脈弓離断症(Celoria-Patton分類B型),心室中隔欠損症(VSD),動脈管開存症(PDA),右鎖骨下動脈起始異常の診断で大動脈弓再建,PDA切離と肺動脈絞扼術を受けた女児である.術後,心不全症状が続き,2カ月時に円錐中隔欠損のVSDをTeflon feltでパッチ閉鎖し,卵円孔直接閉鎖と肺動脈絞扼解除術を施行した.心不全症状は改善したものの,術直後から暗赤色尿,貧血が出現した.心エコーからVSD leakageとパッチが右室流出路に突出したための狭窄に起因する機械的溶血性貧血と診断した.
輸血などの内科的治療で経過観察していたが溶血は改善せず,結局VSD閉鎖から3カ月後に死亡した.剖検所見から,溶血はパッチ閉鎖の際に補強の目的で使用したTeflon pledgetのroughな表面が右室流出路に突出していたために起きたものと考えられた.死因は機械的溶血性貧血と大量の輸血によるヘモジデローシスに起因する腎不全と思われた.
術後の高度な機械的溶血性貧血の原因が外科的問題と考えられる場合,いたずらに内科的治療を続けるべきではなく,患者の全身状態,輸血の間隔や量などを総合的に判断し,積極的に再手術に踏み切ることが重要である.

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