心臓
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症例 左室腔内にspontaneous echo contrastを認めた左右冠動脈左室瘻の1 例
清川 裕明井内 和幸石川 忠夫〓野 謙介
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1992 年 24 巻 5 号 p. 557-561

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抄録

症例は,54歳男で,胸部不快感と心電図異常の精査のため入院した.高血圧の既往はなく,心雑音や心拡大もなく,血液検査も異常なかった.心電図はII,III,aVF,V3~6のST-T変化(V4:巨大陰性T波)がみられ,運動負荷陽性であった.心臓の核医学的検査ではび漫性の心筋肥厚がみられた.断層心エコーでは左室腔の拡大や壁運動異常はないが,心尖部肥厚がみられた.また左室腔内に心尖部から左室流出路に向かうspontaneous echo contrast(SEC)がみられ,これはMモードでは線状エコーを示した.またカラードプラー断層心エコーにて軽度の僧帽弁閉鎖不全がみられた.
冠動脈造影では左右冠動脈とも狭窄や拡張はないが,拡張期に右冠動脈と左前下行枝のそれぞれの末梢より左室腔内へび漫性に直接造影剤の流出がみられた.以上より左右冠動脈左室瘻を伴った心尖部肥大型心筋症を疑った.
冠動脈左室瘻はまれな疾患であるが,肥大型心筋症との関連性が指摘される.また流動エコーは,従来モヤモヤエコーやSECと呼ばれるが,その原因については十分明らかではない.これまで冠動脈左室瘻とSECの合併の報告はないが, 心室瘤や高度の僧帽弁疾患のない例で,左室腔内にSECを認めることは極めてまれであり,冠動脈左室瘻からのシャント血流と左室腔内のSECに関連性が疑われ若干の考察を加え報告した.

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