心臓
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症例 心タンポナーデをきたした右房内平滑筋肉腫の1手術例
海野 透理須藤 憲一森田 裕林 信成田所 雅克野口 顕一池田 晃治水野 明神代 秀爾石川 恭三内ケ崎 新也毛利 昇
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1992 年 24 巻 5 号 p. 594-599

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抄録

原発性悪性心臓腫瘍は,極めてまれな疾患であり,その予後も極めて不良である.我々は,急性心タンポナーデをきたし,緊急手術を必要とした右房原発の平滑筋肉腫の1例を経験した.原発性心臓腫瘍の発生頻度は著しく低く,Strausら1)の剖検例480,331例の集計では0.0017%,Fineら2)の157,512例の集計では心膜腫瘤を含め0.028%である.McAllisterら3)の心臓および心膜原発の腫瘍,嚢腫553例の報告によると,心臓の良性腫瘍は319例(59.8%)であるのに対して悪性腫瘍は125例(23.5%)と少なく,特に悪性腫瘍の中でも平滑筋肉腫は1例で極めてまれである.そのためか,本症に関する報告の多くは自験例とともに過去の文献例を記載しているが,文献によって異なる事もあるのでここでは入手し得た文献により直接確認し得た症例のみを取り上げて一括した.1941年のWeirら5)の症例から今回の報告例まで,重複例6)~8)を除くと平滑筋肉腫は20例にすぎなかった.これら20症例の報告時の平均年齢は,43.9歳,男12例,女8例で,発生部位は左房9例,右房5例,右室5例,左室1例であった.治療に関しては化学療法,放射線療法,免疫療法,外科的療法が行われるが,本疾患そのものの発生頻度が極めてまれであることからどの治療が有効かは明らかではない.したがって心臓腫瘍の場合診断がつきしだい可能ならば,まず外科的療法を試みることはいうまでもないが,発生部位が心臓であることから腫瘍の全摘出は困難であることが多く予後不良である.

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© 公益財団法人 日本心臓財団
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