心臓
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症例 心筋梗塞後に仮性心室瘤を合併し長期生存した1例
辻 信介井上 純一土橋 清高深水 良久原 敏夫辻 秀雄藤瀬 嘉則山元 博松尾 修三
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1992 年 24 巻 6 号 p. 707-711

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抄録

狭心症症状を主訴として来院した陳旧性心筋梗塞患者で画像診断法,特に心臓MRI検査により仮性心室瘤の合併を診断した.本例は長期生存例と思われる興味深い症例で若干の考察を加え報告する.症例は75歳女性.既往歴は65歳時,心筋梗塞.主訴は前胸部圧迫感.入院時,心電図はV1~V4でQSパターン,II,III,aVF,V1~V6でST上昇を示したが心筋逸脱酵素の上昇は認めなかった.心エコー,CT像にて心尖部を中心とした左心室瘤と辺縁が石灰化したもう1つの腫瘤を認め,仮性心室瘤の存在を疑った.左冠動脈造影上,前下行枝は近位部で完全閉塞しており,左心室造影上,心室瘤を認めたが仮性心室瘤は造影されなかった.心臓MRI検査では左心室瘤の下方に心膜に囲まれ,内部に器質化した血栓をもつもう1つの腫瘤を認め,仮性心室瘤と最終診断し,手術により確認した.本例の仮性心室瘤の形成時期は明らかではないが,病歴上10年前の心筋梗塞発症後1カ月後に,詳細不明の一過性ショック状態を認め,その後症状なく経過していること,心室瘤内血栓形成と心室瘤辺縁の石灰化形成等からみて,仮性心室瘤の形成後に約10年間生存しえた例と考えられた.本邦での報告20数例のうち,10年間生存し確定診断しえた例はなかった.本症例のごとく両心室瘤間に血液の流入がない場合,診断方法としては左心室造影検査よりも心臓MRI検査の方が有用であると考えられた.

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