抄録
症例は54歳男性.生来健康であり無症状で経過していたが,平成2年5月の検診にて心拡大および心臓超音波検査上大量の心膜液貯留を認め,精査目的にて当科紹介入院となった.入院後採取した心膜液の分析では,外観が乳白色であり,鏡検上コレステロール結晶を認めない事.これに加えて心膜液内にSudanIIIに赤染する脂肪球を認め,かつ心膜液内トリグリセライドが血清中に比し有意に高値であった事より,原発性乳び心膜症と診断した.診断確後,胸管切除ならびに心膜開窓術を施行.術後経は順調であり,再発を認めていない.本疾患において,胸管と心膜腔との交通を直接または間接的に明する事は,比較的困難を伴う事が多いが,本例は胸管の術中造影を試み,心尖部に造影剤の貯留を明し得た貴重な症例と考えられた.