心臓
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症例 小児期発症川崎病による若年者心筋梗塞の1例
竹内 弘明安達 由美子福島 和之田中 政新谷 冨士雄薗部 友良大川 澄男
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1993 年 25 巻 12 号 p. 1424-1428

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抄録

症例は9歳時より10年間の追跡中に急性心筋梗塞を発症した巨大冠動脈瘤を有する川崎病の19歳男性.この間計4回の冠動脈造影検査(CAG)を施行し,冠動脈の歴年変化を観察し得た.9歳時の大動脈根造影にて左右冠動脈の起始部に巨大冠動脈瘤を認めた.13歳時のfollow-up CAGでは右冠動脈(RCA)の近位部(巨大,ソーセージ状),中部(小,球状),遠位部(小,球状)の3カ所に冠動脈瘤を認めた.左冠動脈は主幹部と前下行枝(LAD)の近位部に内径15mmの球状の巨大冠動脈瘤をそれぞれ2個認めた.LADの造影遅延を認め,A-Cバイパス手術の適応につき検討したが,トレッドミル負荷心電図および負荷心筋シンチグラム等にて虚血の所見がなく,抗血小板剤を中心とした保存的治療の方針とした.17歳時のfollow-up CAGではLAD近位部の冠動脈瘤の内腔の縮小と造影遅延の消失を認めた.RCAは中部の完全閉塞および末梢へのbridge collateralを認めた.約1年半の怠薬後に広範な急性前壁中隔梗塞を発症した.CAGではRCAとLADの近位部の完全閉塞と左回旋枝動脈からの側副血行を認めた.左室造影では広範な前壁中隔領域のakinesisを呈した.
中高年の動脈硬化性冠動脈病変に比べて複雑な川崎病冠動脈病変の歴年変化を小児期より10年近くに渡り観察し得た興味ある症例と考えられ報告した.

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