心臓
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研究会 第26回 志摩循環器カンファランス 主題:ミオシンの分子生物学 平滑筋ミオシン重鎖の多様性と病態マーカーとしての意義
永井 良三黒尾 誠相川 真範金 孝珠中原 賢一
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1993 年 25 巻 12 号 p. 1461-1468

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抄録

動脈硬化の進展に血管平滑筋の増殖や細胞の形質変換が重要な役割を担っている.平滑筋の細胞形質の解析には,収縮蛋白をはじめとする細胞骨格の分析が非常に有力である.血管平滑筋には3種類のミオシン重鎖アイソフォームが存在し,平滑筋の分化状態に応じて発現を変換する.とくに実験的血管障害に増殖する平滑筋は,胎児期のミオシン重鎖の発現様式を示すことが特徴的である.胎児型ミオシン重鎖は増殖平滑筋,PDGF刺激で発現が亢進し,その遺伝子転写調節機構の解析が増殖と分化の関係を解明するうえで重要と考えられる.
一方,ヒト動脈硬化は,動物よりもはるかに長い時間を経て形成されるため,ウサギとは異なる経過で病変が形成される.とくに冠動脈では出生後早期より平滑筋増殖による内膜肥厚が進行し,20歳前後にはしばしば中膜以上の肥厚を認める.冠動脈の内膜平滑筋は中膜平滑筋とは異なる状態にあることは,ミオシンの発現パターンから明らかである.高齢者冠動脈では内膜平滑筋が減少し,線繊化したプラーク内に,新生血管が出現し,この周囲にマクロファージやリンパ球様細胞が集簇していた.また冠動脈にプラークが形成されると,内膜平滑筋だけでなく中膜平滑筋でもミオシンの発現量が減少する.高血圧症に伴う細小動脈硬化症は,腎生検標本の血管平滑筋ミオシンの発現が有用な指標になる.

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