心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床 急性心筋梗塞における血中リポ蛋白( a ) の意義
特に冠動脈硬化重症度との関連について
富田 喜文高野 照夫清野 精彦高山 守正宗像 一雄太田 真夫田中 啓治大竹 稔早川 弘一
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 25 巻 3 号 p. 281-288

詳細
抄録

急性心筋梗塞患者において,リポ蛋白(a)(Lp(a))の冠動脈硬化症に及ぼす影響を明らかにするため,発症直後と4 週後に血中Lp(a)を測定し, これと冠動脈造影所見による冠動脈硬化重症度,および各種血中脂質関連物質などとの関係について検討した.対象は,発症から12時間以内に入院した急性心筋梗塞患者55例(男43例,女12例).4週後の血中Lp(a)は平均22.1±15.8mg/dlで,発症直後のLp(a)値と差がなかった.慢性期の冠動脈造影所見における有意狭窄病変により0枝~3枝病変の4群に分けて検討した.その結果,血中Lp(a)は1枝および2枝病変群において有意狭窄を持たない0枝病変群に較べ有意に高かった.また,冠動脈狭窄度より算出した重症度スコア(Gensini score)と4週後のLp(a)値の間には,Lp(a)が25mg/dl以上の高値を示す症例に限って,有意の正の相関を認めた.さらに,正脂血症の24例に,同様の検討を行ったところ,2枝と3枝病変をあわせた多枝病変群のLp(a)は,0枝病変群に比較して有意に高かった.
以上の結果より,急性心筋梗塞においてLp(a)が高値のものは冠動脈硬化がより高度であり,特に正脂血症者では,Lp(a)が心筋梗塞の危険因子として重要な役割を果たす可能性が示された.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top