心臓
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症例 右室流出路の狭窄を呈した非破裂右バルサルバ洞動脈瘤の1例
加藤 豊雄松岡 宏濱田 希臣大谷 敬之阿部 充伯関谷 達人住元 巧日和田 邦男宍戸 道弘富野 哲夫
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1993 年 25 巻 3 号 p. 308-314

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抄録

症例は69歳男性.胸部絞扼感を主訴に入院した.心エコー図とMRIによる非観血的検査で右バルサルバ洞動脈瘤を疑い,平成3年5月30日心臓カテーテル検査を施行した.大動脈造影で,非破裂の右バルサルバ洞動脈瘤および大動脈閉鎖不全症(SellersIII度)を確認した.右室造影から右バルサルバ洞動脈瘤による右室流出路の狭窄を認めた.肺動脈と右室の収縮期圧較差は28mmHgであった.冠動脈造影を行い左冠動脈主幹部(75%),前下行枝(Seg7;99%,Seg8;75%)と回旋枝(Seg13;75%)に有意狭窄を認めたが,右冠動脈には入口部を含め有意狭窄所見を認めなかった.右室流出路の狭窄を呈する非破裂の右バルサルバ洞動脈瘤は生前に診断されることが少なく,現在まで6例の報告しかない.また,心室中隔欠損症の合併なしに,右バルサルバ洞動脈瘤が大動脈弁閉鎖不全を合併することはまれであるが本症例の術中所見では心室中隔に異常所見は認められず,バルサルバ洞動脈瘤の成因を考える上で興味ある症例と思われた.

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