心臓
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症例 心電図検診で発見された不整脈,伝導障害型心筋症の1例
津田 尚也岡 隆治境野 環樹斎藤 隆土田 晃奥野 晃正印鑰 史衛
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1995 年 27 巻 1 号 p. 72-75

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抄録
小児の心筋症は頻度の高い疾患ではないが,時として突然死や進行性心不全をきたすことがあり,小児心疾患の中でも重要な疾患の1つである.今回我々は無症状に経過し,学校の心電図検診を契機に,不整脈(心室性期外収縮),伝導障害(2度房室ブロック,左脚ブロック)を発見され,広範な心筋病変を呈した1症例を経験した.
症例は14歳男児.成長発達に問題なく,今までに特に自覚症状は訴えていない.中学入学時の心電図検診で不整脈,伝導障害を指摘され,旭川医科大学小児科に精査目的で入院した.負荷心電図上V5~ V6領域で明らかな虚血パターンがあり,負荷心筋シンチでは運動負荷中および再灌流時を含め,殆ど変化しない広範な側壁,下壁,心尖部の欠損像を呈した.心エコー,心臓カテーテル造影所見においては,左室内異常筋束が認められた.右室心内膜心筋生検では,心筋肥大,細胞索の断裂,心筋の樹枝状配列があり一部空胞変性を呈していた.
特発性心筋症の中には,肥大型とも拡張型ともつかない症例があり,内科領域では電気障害型と称されている.その特徴は不整脈伝導障害を主徴とし,心筋線維化,配列の乱れ,細胞変性,肥大の病変を呈する.本症例においても同様な病変を認め,不整脈の原因病変であると思われた.小児科領域においても,不整脈伝導障害を主徴とする心筋症の存在が考えられ,その発見には心電図検診が重要であると考えられた.
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