心臓
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症例 安静時心電図でQT時間が正常であった特発性QT延長症候群の1例
浅田 みどり犀川 哲典原 政英竹下 泰下山 信夫丹羽 裕子米持 英俊前田 利裕坂田 利家嶋田 丞
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1995 年 27 巻 1 号 p. 76-80

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抄録
イソプロテレノール負荷にてはじめてQT延長が明らかになった先天性QT延長症候群の1例を報告した.症例は15歳の女性.12歳時より運動時の意識消失発作を繰り返すため近医を受診.ホルター心電図で運動中にtorsades de pointes型心室頻拍が認められ,精査のため当科に入院した.既往歴,家族歴に特記事項はなかった.入院時検査にて聴覚の異常はなく,血液の各種検査は正常であった.入院時心電図は洞徐脈,正常軸,T波は一部2峰性であったが,QTcは380msecと正常であった.入院中のホルター心電図でもQT延長および明らかなT波の異常は認められなかった.トレッドミルテストおよび心房・心室早期刺激,高頻度刺激を行ったが,心室頻拍は誘発されなかった.しかし,イソプロテレノール負荷(0.02μg/kg/min)により2峰性T波を伴ったQT延長が認められ(620msec),プロプラノロール30mg/day投与によりイソプロテレノール負荷による心電図変化は抑制されたがニコランジルでは抑制されなかった.以後プロプラノロールにより現在まで1年以上意識消失発作を認めていない.安静時心電図でQTが正常である,潜在性の先天性QT延長症候群を診断する上で,イソプロテレノール負荷は有用であると考えられた.
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