1995 年 27 巻 5 号 p. 411-416
糖尿病患者における無症候性心筋虚血の頻度とその臨床的背景について検討した.心筋梗塞の既往や狭心症状がなく,安静時心電図異常のない成人発症の糖尿病患者128例にトレッドミル運動負荷試験を施行したところ,34例が陽性で陽性率は28.3%であった.陽性例と陰性例について臨床的背景を比較すると,糖尿病性網膜症と高血圧症の合併が陽性例で有意に高率であった.また眼底所見上,綿花様白斑の出現も陽性例で多く認められた.陽性例34例中19例に冠動脈造影を施行したところ,11例に有意狭窄を認めた.有意狭窄のある症例では網膜症・綿花様白斑・高血圧症がやはり多く認められた.腎症・高コレステロール血症も有意狭窄のある症例で多かった.以上より糖尿病患者において,冠危険因子の他に網膜症の存在が冠動脈病変の予知因子となる可能性が示唆された.