心臓
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症例 副伝導路の順行伝導および逆行伝導に過常伝導を認めた顕性WPW症候群の1例
土岡 由紀子平岡 明人加藤 雅也平賀 正文村岡 裕司森島 信行中山 賢証塩出 宣雄唐川 眞二山形 東吾松浦 秀夫梶山 梧朗
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1996 年 28 巻 8 号 p. 681-686

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抄録

順行性および逆行性に副伝導路の過常伝導現象を示した顕性WPW症候群の1例を報告した.症例は58歳,男性で,左側後壁にKent束を有する顕性WPW症候群で,高位右房からの早期刺激時の副伝導路の順行性不応期は390msecであった.基本周期(BCL)700msecの右室刺激で早期刺激間隔(S1 S2)が640~480msecで室房伝導はいったん途絶し,460~440msecでは再び室房伝導が回復した.この時の逆行性最早期心房興奮部位はやや中隔よりの左側後壁Kent東部位にあり,副伝導路の逆行伝導に過常伝導が認められた.副伝導路の順行伝導における過常伝導現象は高位右房刺激では認められなかったが,BCL700msecの冠状静脈洞刺激でS1S2が620~540msecの時いったん副伝導路の順行伝導が途絶し,520~360msecで再び副伝導路の伝導が回復し,過常伝導現象が認められた.このように心房の刺激部位の変更により初めて副伝導路の順行伝導に過常伝導現象が明らかとなった例の報告はなく,また,良好な副伝導路の順行伝導を保ちながら逆行伝導に過常伝導を認めた点もまれで,興味が持たれた.本例はisoproterenol投与後の伝導性改善により順行伝導,逆行伝導ともに副伝導路の過常伝導現象の消失がもたらされた.

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