1997 年 29 巻 3 号 p. 219-225
順方向性通常型心房粗動(AFL)に対し,下大静脈一三尖弁輪(IVC-TV)間への線状焼灼によりAFLの停止とともに同部位の伝導ブロックラインの作成に成功したものの,逆方向性通常型AFLの再発を認めた1症例を経験した.症例は22歳男性,発作時AFLは右心房内を反時計方向に旋回する順方向性通常型AFLであり,IVC-TV間への7回の線状通電により停止し,同部位における両方向性の伝導ブロックラインの形成を確認するとともに再誘発不能となった.しかしながら,2週間後右心房内を時計方向に旋回する逆方向性通常型AFLを認めた.IVC-TV間の詳細な心房電位マッピングを施行した結果,前回の焼灼線上において粗動波に108ms先行する残存心房電位を認めた.同部位に対する1回の通電によりAFLは停止し,伝導ブロックラインの形成および再誘発不能となった.以後3カ月間の経過観察期間中,順方向性および逆方向性通常型AFLの再発は認めていない.本例は,IVC-TV間の伝導ブロックラインの形成がAFLの再発を予測できず,またその再発AFLがアブレーション前に認められた順方向性通常型AFLの逆方向旋回であった点において興味ある症例と考え報告する.