心臓
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症例 Torsades de pointesおよび交互性QT延長に対してメキシレチンが有効であったQT延長症候群の1例
石川 浩志広瀬 保夫小田 弘隆庭野 慎一池主 雅臣相澤 義房樋熊 紀雄
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1998 年 30 巻 5 号 p. 302-308

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抄録
症例は53歳,女性.意識障害で搬送された.来院時torsades de pointesを呈し,緊急処置を要した.心電図上QTcが0.58sec1/2と延長していたが,K2.8mEq/l,Ca6.1mg/dl等の低電解質も認められた.低電解質の補正およびリドカインの投与を行ったが,第2病日に心電図上交互性QT延長を認め,心室性期外収縮および非持続性心室頻拍が多発した.この際,RR間隔は心房性期外収縮の二段脈により長短連結期を繰り返していたが,QTcは0.73および0.58sec1/2と延長かつ変動していた.これに対し,メキシレチンの静注を行ったところ,QTcは0.55および0.57sec1/2とQT間隔および変動ともに減少し,心室性不整脈も激減した.その後,メキシレチンの経口投与で経過観察し,心房性期外収縮および交互性QT延長は消失したが,QTcは0.51sec1/2と延長していた.QT延長症候群としての家族歴は明らかでなかったが,孤発例,特にメキシレチンが効果的であったことよりNaチャネル異常によるQT延長を疑い,慢性期に各種負荷を行ったがLQT3に特徴的な所見は得られず,塩基配列解析を含む遺伝子解析でもLQT2,LQT3は否定的であった.メキシレチン負荷によるQTc短縮は0.51から0.46sec1/2と軽度であったが,急性期の不整脈抑制効果からメキシレチン投与下に経過観察の方針とした.Naチャネル異常以外の機序のQT延長症候群に対してメキシレチンが著効したか,あるいは未知のNaチャネル遺伝子異常が関係している可能性がある症例として報告した.
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