抄録
組換えアデノウイルスを用いた心筋細胞への遺伝子導入法は,導入効率が高く,成人期の心筋細胞や生体内の心臓にも導入が可能であることなど,遺伝子導入法として優れた特徴を有する.我々は,心筋細胞の増殖・肥大の分子機構を解明する目的で,アデノウイルス遺伝子導入法を利用して解析を行ってきた.これまでの検討により,Rasを介したRNA polymeraseIIのリン酸化が心筋細胞肥大時におけるRNA量・蛋白量の増加に関与していること,また,pRbファミリーやp300が心筋細胞増殖を抑制する機能を持つことが,それぞれ明らかになった.さらに,配列特異的DNA recombinaseであるCrerecombinaseをアデノウイルスを用いて成人期の心臓に生体内で導入することにより,成人期に心臓組織特異的な遺伝子ノックアウトを行うことが可能であることも示した.